CAPERTICA
5年ほど前に当店で展開していた『COLINA(コリーナ)』。
そのデザイナーである岡田さんが出掛けるブランド、『CAPERTICA(カペルチカ)』を、
この秋から新たに取扱い開始します。
生地を作る前の糸、さらにはワタにまで遡って拘ったファブリック。
奥が深すぎる世界を楽しんでください。
中島:それではよろしくお願いします。
新たに『CAPERTICA』を扱わせていただくということで、
以前扱わせてもらってた『COLINA』との違い?
それをちょっと教えていただきたいんですけど、
ユニセックスブランドっていう立ち位置でしたっけ?
岡田:よろしくお願いします。
ユニセックスとして立ち上げたんですけど、男も女も着れる服ってなるとやっぱり、
ファッションとして成立させるのが難しかったんですよ。笑
なんで今はどっちかっていうと、『COLINA』と比べてコテコテのことはやってないブランド、
女性も選んでくれるメンズ服といった感じですかね。
中島:なるほどそういうことですか。
その『COLINA』よりコテコテのことはやってないっていうのは、どういうことです?
素材、デザイン色々あるとは思うんですけど。
岡田:例えばヴィンテージがどうとか、ミリタリーのディティールがどうこうっていうのはやってなくて、
もう少し普通のって言ったらいいんですかね、着易いものを作ってます。
シルエットも『CAPERTICA』はボックスでワイドで、ゆったりとしている感じで。
『COLINA』だともう少し男性らしいフィッティングを取ってたりするんですよね。
肩幅とか袖の振りとか、ちょっとクラシックで男っぽい。
中島:より幅広い人に着てもらえそうっていうのが、『CAPERTICA』なんですね。
そしたら次は岡田さんお得意の、素材のことについて聞いていきたいんですけど、
今回仕入れさせてもらった中からまずはこのウールのカットソー、
スーパー120のウォッシャブルウール。
これの素材について教えていただいていいですか?
岡田:はい。それはまぁ、スーパー120の原料使ってるんですけど、
拘ってるのは繊細さじゃなくて糸の細さです。
94番双っていう昔からうちが使ってる番手があって、糸の太さが特殊で、要は細いんですよ。
なんで真夏でも着れるし、軽さがある。
1年を通して着れるのはその細さで作ってるからなんです。
スーパー120とか140じゃなくて、『糸自体が細い』ってところがポイント。
たぶんスーパー120のTシャツとか作ってるところは他にもあると思うんですけど、
大抵もっと糸が太いんですよ。
そうなるとやっぱり生地が肉厚になってくるんで、真夏とか蒸し暑い時期には厳しいですよね。
だからそのアイテムに関しては軽さ、それで暖かくもなく寒くもないっていう、
ストレスのない着心地っていうのが主な特徴ですね。
中島:確かにむっちゃ軽いですもんね。それでいて年がら年中着れるってことですね。
でもこんな素材って糸から作ってるんですか?
岡田:そうです、作らないとないんで。
1年分で40反とか50反作って。笑 (1反で1,000平方メートル、50mプールくらいの大きさです)
中島:作り過ぎでしょ!笑
岡田:その代わり色の展開とかは少ないんですよ。
ベーシックな色だけにして、それでロンT作ったり半袖作ったりって感じです。
あとこのやり方じゃないと価格を抑えられないんですよ。
ある程度原料で抑えて、デザインもTシャツみたいなシンプルなものにして縫製コストも抑える。
それをすることでやっと、買いやすい価格で提供できるんで。
だからなるべく『洗練されたベーシック』なものをっていうのが、『CAPERTICA』でやってることです。
中島:なるべく洗練されたベーシックなもの?
岡田:はい、着丈とか身幅のバランスであったりとか、襟元の付け方とか、
もちろんアップグレードはしていってるんですけど、癖をとにかく出さないようにしてる。
「これだったら誰でも着れるよね、着たときにバランスが良いよね」っていうものを心掛けてますね。
中島:なるほどですね。
それじゃあ次はこのスウェットっぽく見える、スーパー140のウォッシャブルトレーナー。
さっきのと比べたら起毛してるというか、全然風合いが違うけどこれは何でなんですか?
岡田:まずスーパー140ではあるんですけど、糸の番手自体は太いです。
中島:あぁ~さっきのより糸自体が太いんや。
でもこの起毛感は何なんですか?
岡田:それは縮絨加工によるもの、要はウールを縮めてるんです。メルトンみたいに。
ただその生地の凄い特殊なところは、ミルドって言うて、
縮絨して生地を縮めて目を詰めてるんですけど…、
『縮めて詰めてるけど、縮まないようにしてる』んです。
ウォッシャブルなんで。
中島:分かった分かった、何となく。笑
洗っても縮まない生地やねんけど、縮めて作ってるんや。
岡田:それがむちゃくちゃ難しいんですよ。
通常は縮まない、防縮ウールを持って来てウォッシャブルにするっていうのがほとんどなんですけど、
それだとミルドが出来ないんですよ、フワッと感が出ない。
だから最初は縮むウールで作って、途中から縮まないようにするってことをやってます。
中島:うん、正直もう分かりません。笑
でもかなり特殊なことをしてるってことですね?
岡田:縮めて膨らみ感とか肉厚は出してるけど、これ以上は縮んじゃ駄目よってやつです。笑
中島:…オッケーです。
そしたら次は、展示会のときにも質感が凄いなって思った、
スーパーソフトコットンのロンT、これってどうやってこの質感が出てるんですか?
岡田:それはスーピマコットンの綿糸なんですけど、その糸にする前のワタの段階で…、
普通ワタって海外から輸入してるんですけど、そのときにべールって言って、
ラッピングしてカチカチにして持って来るんですよ。
そうすると潰れちゃうんですよね、しかもそのべールの大きさって何トンとかあるようなやつなんで、
とにかくギッチギチに固まったワタが届くんです。
中島:ギュウギュウに詰めて送ってくるんや、はいはい。
岡田:ぺっちゃんこの状態を、ある程度はどこの紡績も糸を作るときに復元させるんですけど、
それをより徹底的にふっくらさせてるんです。
中島:どうやってですか?
岡田:寝かせるんですよ、湿度とか温度とか条件を揃えた環境で。
綿って一気に水をかけたらべちゃべちゃになっちゃいますけど、水蒸気を含むと膨らむんですね。
それをしっかり、通常よりも長くその工程をして、フワフワに膨らましたワタを使って糸にしてるんで、
まぁふっくらした糸ができると。
あと編み方も、天竺で編んじゃうとそこまで膨らみでないんですけど、
ダブル組織、スムースにして編んでるんで、織物でいう二重織と一緒ですよね、空間ができてふっくらする。
中島:あ~そういうことか。
岡田:そういう糸でそういう編み方をして、
さらに加工でも、バイオだったり柔軟だったり、よりトロトロになるようにしてるんですよ。
糸、編み、加工って3段階でふわふわトロトロにしてるんで、そういう風合いになってるんです。
中島:なるほどな~。でもこの凄さは実際に触ってもらわんとわからないやろうな。
そしたら次はパンツにいきます。
今回スタッフも気に入って早速穿いてるこのコーデュロイパンツ、
表使いと裏使いのやつ。これはどうなってるのですか?
岡田:それはどっちも同じコーデュロイなんですけど、単純に片方は裏返して使ってるんですよ。
ただ普通のコーデュロイやったらそんなストライプの柄みたいにはならないんで、
先染めで作ったコーデュロイを使ってます。
表使いのブラウンも先染めで、それブラウンの単色じゃなくてベージュとブラックも混じってるんですよね。
裏見てもらったら分かるかな。
中島:これ?
あ~、確かに言われてみればそう見えますわ。
岡田:だからちょっと深みのあるコーデュロイなんですよね。
陰影が出るような作り方をしてる。
ただブラウンの方は裏にしてもストライプって感じじゃないし、
そんなに格好良くはないなって思ったから、そっちは普通に表使いしてます。
ブラックは裏の方が格好良く見えたから、どうせやったら2色で全然違う見え方にしようと思って。
こっちの色は表、こっちの色は裏ってなったら正直工場は嫌がるんですけど、今回はそれで作ってもらいました。
中島:なるほどな~。
それじゃあ同じ形で素材違い、このシルク混のモールスキン。
これの素材のこといいですか?
岡田:それはやっぱりシルクが20%入ってることによって、
普通のモールスキンってハリと重たさがある生地なんですけど、そこを抑えてるんです。
穿くとシルエットはしっかり出るんですけどね。
中島:モールスキンのあの紙みたいな硬さはないんや。
シルエットが出るくらいのハリはあるけど、嫌なハリはないというか。
岡田:そうです、それがやっぱりシルクのおかげなんです。
あとまぁ軽さもそうですよね、肉厚とか糸の番手の割には。
シルクの方が糸にしたときに比重が軽いんですよ。
パンツに軽さとかソフトさが出てるのは、シルクが入ってるからなんです。
あとコットンに比べて、ウールに似た保温性とか体温調整機能はシルクの方が強いです。
中島:あっ、そうなんですか?
岡田:はい、動物性の繊維はそういう特徴がありますね。
シルクは蚕の繭、中の幼虫を守るために作られた繊維で、
ウールは羊の身体を守るためのものじゃないですか。
そもそも、元がそのための繊維なんで、そういう特性が出やすいんです。
植物性繊維はあまりそういうのはなくて…まぁリネンやヘンプは夏場の涼しさみたいなんはありますけど。
コットンは風合いが良いとか、色んな加工がしやすいとか、
安定して生産できるとか、あと僕たちに馴染みがあるとか。
っていうのはあるんですけど、どこまでいってもコットンはコットンやなって思います最近。
さんざん綿の生地とか商品も作ってきましたけど、結論コットンはコットンですよ。笑
中島:やっぱり岡田さんはウールとかの方が好きなんや。笑
それじゃあ次が最後、鬼カルゼを使ったルージートラウザーズ。
これについてお願いします。
岡田:はい。ルーズって名前付いてますけどそんなにルーズじゃなくて、
ゆったりとしたワイドストレートって感じ、テーパード弱めの。
ただそのシルエットが凄く綺麗に出てるのが、そのカルゼの素材によるものです。
中島:カルゼのこの硬さというか、ハリが?
岡田:そうですね、刺し子とかと似たような織り方なんで、
糸が浮いててボコボコしてるじゃないですか、組織感があって。
しかもそれハリがあるんですけど、綾目の方向に、斜め方向にしなやかに伸びるんですよ。
中島:うわっ、ほんまやむっちゃ伸びる!
岡田:だから膝の曲げ伸ばしとか、見た目の割にすごく楽ですよね。
同じ太さのデニム穿いてるのとかと比べたら全然違うと思います。
中島:これなんで?ちょっとビビるほど伸びるねんけど。
コットン100でこんなんなるんや。
岡田:綾目の方向に糸が浮いていってるからですよ。
あとそのパンツはサイドに縫い目が無いんで、
膝曲げたときとかに縫い目で止まらない、ぐぃーんと伸びる範囲が広いんです。
中島:あぁ、サイドの縫い目が無いことが、素材の特性ときっちり合ってるんや。
これ服好きには喜んでもらえそう。
岡田:実際に穿いたり、着たりしてもらえたら、
「良いやんこれ!」ってなってもらえると思います。
中島:そしたら今日はありがとうございました。
週末からじっくり販売していきますね。
岡田:はい、ありがとうございました。
いかがだったでしょうか?
正直マニアック過ぎて僕らも分からない部分がありましたが、
実際に手に取ってみると素材の心地よさや、洗練されたバランスが確かに伝わってきます。
店頭での販売は10月12日から。
『CAPERTICA(カペルチカ)』、覚えておいてください。