「革から靴へ」 生産現場探訪 (後編)
金づちと工作機械の音が高く鳴り響く、ここは靴が生まれる工房。
あまり生産の現場にお邪魔する機会はないのだが、今回代理店さんの計らいで、
とあるシューズメーカーさんに見学に伺わせていただいた。
こちらも昨日紹介した新喜皮革さんと同じく姫路にある会社だ。
社長はまずお客様の足のことを考えるのだという。
いわく「良い環境で履いてもらいたい」と。
これはラストと呼ばれる足の木型なのだが、ここから靴作りが始まる。
靴の良しあしを決める最も重要な部分だと考えておられ、
履き心地の良い物を常に追究されている。
そもそも視点が違う、そこに職人気質の高さを感じた。
靴作りが最初に靴の内側から始まるというのが非常に印象的だ。
数多くの工程と製作機械があり、順に実際の作業を見せてもらった。
厳選された革が裁断され、このように靴の形に成形されてゆく。
非常に繊細で、かつ危険でもある作業だが職人さんたちは手早くこなしておられた。
意外にこういった工具を使うことが多いのにも驚かされた。
本当にこのように手仕事で行われる部分が多いのだ。
そしてそれぞれの職人さんが一心不乱に作業に打ち込んでおられる。
このミシンは第二次世界大戦前のドイツの物で、社長にしか扱えないらしい。
場合によってはご自身で修理されたり、部品を作られることもあるという。
ふと横を見ると車の修理工場のように工具が下げられていた。
練りコルクの接着剤の匂いがツンと鼻をつく。
こうして丁寧に塗りこまれる。これが沈むことで、
自分にとって履き心地の良い靴に育ってゆく。
ソールが張られる。この後研磨されて一足が完成する。
今回来て感じたのは、本当に靴作りが好きなのだな、ということだ。
そして若い職人さんたちも多くおられ、皆さん素直で実直な印象を受けた。
そういう方たちが育ち、また日本の手仕事を支えてゆく。
生産現場での熱気にあてられた姫路訪問だった。