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Engineered Garments:G8 Jacket



オープンから16年余り、あらゆる面で当店を支えてきてくれた『Engineered Garments』。

残念ながら今シーズンでその取り扱いを終了させていただくことになりました。

そんな最後のシーズンにセレクトしたのは、ジャケット1型のみ。

なぜこのアイテムを選んだのか中島に話を聞いてみたので、よろしければご一読ください。









中島:『Engineered Garments(以下EG)』って僕の中で、

この店を始めるにあたって大きな後押しとなったブランドだったんだよね。

EGを扱わせてもらえるっていうのがとにかく凄く大きくて、

何でやったんかっていうと、それまで見てきた洋服とあまりにも違う、

「こんなに格好良い洋服を日本人が作ってるんか!」って衝撃を受けたブランドで。


EGの洋服と他の洋服が違うなって感じたのが、

デザインをしてるんじゃなくて、既にある要素を『建築』みたいに積み上げていってるところ。

あの服とこの服をくっつけて、素材はまた別のところから持って来て組み合わせる。

それで最後はウールだろうが何だろうが洗って納品するっていう。

とにかくそれが格好良かったし、アメリカ製っていうのが僕にマッチしてたんかなって。


それでいざオープンしてやっていくうちに、お客さんからのレスも凄くいただけて。

もちろん自分達も大好きで、よく着ていた時期があって。

でもそこから15,6年経つと、やっぱり時代っていうものはどんどん変わっていった。

商売として見たときに、消化率が悪くなって、気が付くとハードルを越えられなくなっていた。

それでまぁ、色々な想いがある中この秋冬でやめるってなったときに、

最後は僕が「これぞEG!」って思えるものをしようって。

それで今回セレクトしたのが、このG8。

もうこれだけに絞ってやろうって。










で、何を理由にこれを選んだのかっていうと、

1つは大器さんがいつかのインタビューで仰っていたキーワードがしっかり入ってるところ。

『重くて硬くてチクチクして着にくい』。

「それが本来のアメリカもので、でもそれを作るアメリカ人がいなくなったから自分がやろうと思った。」

って答えてはって、それが凄く記憶に残ってて。

手に取ってもらったら分かるけど、どう考えても重いし硬い。

でもこれはあえてやってる、大器さんが大切にしてるポイントなんだっていう。


もう1つはやっぱりEGらしいと言えるディティールが詰まってるところ。

見る人によってはオーバーデザインに感じるかもしれない…、

例えば肘部分の当て布も本来ここまで大きくする必要はないし。

でもよくよく見ると、ここ(肘当て)に目が行きがちやねんけど、この袖付けのやり方が凄い。

ベンチレーションを付けたりだとか、アームホールも太いからここまでする必要はないと思うねんけど、

いちいち大きい演出をしてくれてる。こことかも3回割ってあって、何回縫ってるんやろうって。


「そこまで必要なん?」って言われるかもしれへんけど、これがファッションとして格好良い。

やっぱり袖を見て欲しいかな、このアイテムに関しては。

これぞEGらしいなって僕は思うし。











で、ディティールって加えれば加えるほど子供っぽくなることが多い、洋服って。

そこでやっぱりサジ加減、「ここでやめておこう」っていう、そのバランス感が大器さんは抜群に上手い。

このG8も色んな服の要素を使っていて、それでも着地は大器さんらしいディティールになってる。


『Willis & Geiger』であったり『FILSON』であったり、もちろんミリタリーウェアであったり。

そういう機能服っていうものをどんどん見ていって、

その機能服を大器さんのフィルターを通してファッションにした場合、

こういう素材で、シルエットで、ディティールになるんじゃないかなって。

男っぽくて、武骨で、しっかりアメリカの匂いがするというか、

ドメスティックブランドのものとは違う空気を纏ってるんだよね。

そういうなところが当然のように高いレベルでしてるのがEGだなって。

やっぱり「あぁ凄いな」って。












残念ながら僕らはここでやめてしまうわけだけど、

EGの洋服が好きだった、今も好き、見たことがあるっていう人は、

直営であったり取り扱ってるお店はまだまだあるんで、これからも見続けていただければなって。

そこで試着して、「EGの良さってどこなんだろう」って思ったときは、

さっき言ったキーワード、『重くて硬くて着づらい』だとか、

ディティールの積み重ねっていうのを思い出してもらって、

「ここがそうか!」って気付いてもらえると僕らとしても嬉しいです。


だからこれからも見続けるというか、洋服が好きな方には忘れて欲しくないブランドかな。

もちろん僕は忘れることなんてできないしね、このブランドに関しては。











いかがだったでしょうか。

スタッフ一同、様々な想いを乗せてセレクトしたアイテムです。

もちろんブランドはこれからも続いて行きますが、

当店における節目の1着として、手に取っていただけると幸いです。






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