Frame Franceについて語る
満を持してと言ったところでしょうか。
7月23日から7月26日の期間、60本を超える『Frame France』が当店に並びます。
さらに23日には、『SPEAKEASY』の山村さんがdoo-bopにやって来ます。
そんな一大イベントに向けて、あらためてメガネについて語っていただきました。
中島:どうしましょう。どれを題材にしたほうがやりやすいとかあります?
山村:どれがいいですかね。まずはシンプルなパリジャンでいくのがいいのかな。
中島:はい。となると…。
山村:あ、この辺とかいいかもしれないですね、40年代。
中島:今パッと手に取らはったやないですか、なんでそれ手に取らはったんですか?
僕、この辺違うんかなと思ったんですけど…。
山村:まあパリジャンらしいと言うと、これが1番パリジャンらしいかなって。
中島:どの部分を見てそう感じてはるんですか、それは?
山村:このシェイプですよね、この玉型(レンズの形)というか。
何て言うんですかね、パリジャンってウェリントンなんですけど、正方形に近いウェリントンで。
ちょっとここが山になってる。
中島:ああ、はいはいはい。
山村:これが、非常にパリジャンぽいレンジですね。
よく言うウェリントンは長方形なんですよ。
ちなみに本来は『台形』って意味なんです、ウェリントンって。
中島:え、そうなんですね。
山村:ああ、これが『ザ・ウェリントン』っていう感じですね。
ほら、底辺と上底の長さがほぼ変わらない。若干短いぐらいかな。
だからまあ、『ザ・パリジャン』っていう形はこっちになるかなと。
あ、この辺もそうですけどね。こっちはちょっとフレームの造りが特殊で、
こういったところが肉厚になってるんですよ。比べていただくと、多分すぐ分かると思う。こっちは薄い。
中島:うわ、ほんまや。
山村:ちょっと分厚いんですよ。だからフレーム幅が出るんですけど、その割にレンズ径が小さい。
ちょっとパンダみたいな見え方するパリジャンですね。
ウェリントンって日本人とかアジア人の顔にも馴染みやすいってされてるんです。
その中で正方形に近い、このパリジャンと呼ばれるウェリントンは、
フランスにはほんと沢山あるんですけど、他の国にはあんまなくて。
中島:あっ、ないんですか?
山村:あんまり見ないですね。大体横長です。
中島:はあ~。
じゃあクラウンパントゥでも、形に幅があったりするんですか?
なんかこっちに下膨れが外に寄っとるやつと、真ん中に寄っとるやつあるじゃないですか。
山村:あります、あります。
中島:あれはもう、ただデザインの違い?これなんかちょっと右寄りでしょ?
山村:そうですね、ダラ~っとね。デザインです、ほんとデザイン。
ちょっとこう、ストロベリーシェイプっていう苺っぽく…。
中島:え、どういうこと?
ストロベリーシェイプ、初めての単語ですよ。
山村:ストロベリーシェイプっていう玉型があるんですけど、
極端に言えば逆三角形みたいな。
中島:そうなんや、ストロベリーシェイプ。へえ~。
山村:まあ、クラウンパントゥも様々ですね、形も。
ガーゴイルも大きなカテゴリーで見たらクラウンパントゥですからね。
中島:へっ?!あっそっか、太いさかい…。
山村:そうなんです。
分かりにくいですけど、一応あれもクラウンパントゥですね。
(別のメガネを手に取って)これも『ザ』ですね。『ザ・クラウンパントゥ』の形してますね。
中島:これ、えげつなそうやな…。
山村:分厚い、うん。ヒンジの造りも非常に丁寧な、こうね、ピンをちゃんと削ってる。
これも1つの、年代を見分けるときの特徴ですね。
中島:そうですか~。
山村:う~ん、これもクラウンパントゥ。
これ、40年代の生地なんですけど、ピンの立てるヒンジがついてるんですよ。
中島:はい、はい。
山村:40年代って基本、ピン、こう削ってるっていう。
中島:ああ、隠してるというか…。
山村:だから推測ですけど、40年代の生地を使って50年代に作られたものじゃないかと。
中島:はあ~。
山村:基本は生地が一番の特徴なんで、ここの作り込みというよりかは。
生地で判断させてもらうって感じですね、年代を。
中島:すごいなあ~。(テンプルを畳んでカチカチと音を鳴らす)
山村:音ね、音いいっすよね!
中島:カチカチっ!!(カチカチと音を鳴らす)
こう、プラスチックみたいな音がするんですよね?ようは。
山村:なんかね、プラスチックというよりは…本べっ甲の眼鏡使ったことあります?
中島:ないです…。
山村:もっと軽い音するんですよ。ちょっと、何て言ったらいいのかな。
そう、『いい音』しよるんですよ、それにすごい近い感じ。
プラスチックの音っていうよりかは、何かほんと、何て言ったらいいのかな(笑)
あの、高い音でこう響く音ですね、綺麗な音。
中島:ほう~。
山村:芯入ってるとやっぱここまで響かないですからね。いい生地でも。
中島:あ、芯があることで響かない?
山村:うん。何か音が違いません?
これと、これと。(音を鳴らして比べる)
中島:あ、確かに。
山村:やっぱほんと、作り込みがどれも丁寧なんですよね。
中島:作り込みって仰ると、どの辺に着眼したはるんですか?
山村:えと、これだけ数を見てると当たり前のことばっかりになるんですけど、
アメリカものとか見てると、合口(あいくち)っていう、ここの所がガタガタなんです。
中島:合ってない?ピシッと。
山村:合ってないですね、アメリカものは。
合ってないし、ここの太さとここの太さも合ってない。
中島:ああ~、『アメリカ』ですよね。
山村:無骨な良さもありますが、まあ生産効率ですよね、はい。
フランスとかも組み上げたときは多分、ガタガタなんですよ。
でもそれを綺麗にこう、面一にしてるんですよ。こことかも。
今の眼鏡は当たり前のようにやってるブランドもあるとはと思うんですけど、
昔はもう、そんなん全然関係ないって感じじゃないですか(笑)
中島:ああ、特にアメリカもんとかと比べると…。
山村:ほんともう、全然ちゃいますね。やっぱ丁寧。
で、他国のものをよく見ていただいたら分かるんですけど、
色んなブランドがあって、色んなのデザインの眼鏡があるんですけど、よく見たら結構似てます、どれも。
中島:え、どういうことですか?
山村:このレンズ径とかがすごい似てるんです、玉型って言って。
中島:うそお?
山村:似てるんです、似てるんです。まわりの側がちょっと違うだけで。
フレンチって似てるけど、おんなじパリジャンでも違うんですよね。
例えばこっちのほうが垂れてるじゃないですか。グーッとね。
中島:あ~あ~、分かります。
山村:これはこう入ってるけど、なだらかに反るとかね。
微妙に全部違うんですよ。このパリジャンとか、ちょっと…ちょい山が外気味ですね、とかね。
中島:確かに。そういう風なとこを見たはるんですね!
山村:見てます、見てます、見てますね。
中島:最初からそういうモノの見方してたんですか?
山村:そんなことはないですよ(笑)
中島:途中から?
山村:途中から(笑)
何かちゃうなみたいな、ははは(笑)
山村:そうですね、これもいいですね。
皆さんやっぱり「太いほうがカッコいい」とか言われがちなんですけど、
細いテンプルってすごい手が込んでて、実は。
中島:クラウンパントゥでよく見ますよね。
山村:そうなんですよ。クラウンパントゥで細いのはすごいよくて。
まあ、細いじゃないですか。この厚さから削ってるわけですよ。
分かります?いきなり細いわけじゃないじゃないですか。削って細くして、最後こう潰してると。
中島:ああ~、そっかあ~。
山村:これはまだ、芯金との間に全然厚みありますけど、
CEBOのクラウンパントゥとかって、もうギリギリなんですよね。
中島:細くするのに美学を感じ取ったんですね。
山村:そうですね。そういったところじゃないですか、作り込みってやっぱり。
あとこれも何回か言ってますけどテレビジョンカットが当たり前のように入ってるとか。
中島:なるほどね~。
山村:そうですね。あとやっぱ分厚いのも話ときましょか。
中島:うん、うん。ぶっちょいやつ、8ミリとかのことですよね。
山村:そうです、そうです。8ミリとか6ミリとか。
実際、現行で眼鏡を作ろうと思ったら、太いやつのほうが再現しやすいです。
中島:と言いますのは?
山村:そういう生地がもう、あるんで。
中島:ああ~。
山村:8ミリを作ること自体は別に難しくはないですね。
あの、薄く作るほうが難しいです。まあ強度の問題です。
セルロイドの含有量が多くないと、薄く作っちゃうとこう、反っちゃうんですよ。
中島:え、どういうこと?(笑)
山村:こうこう、こう反りよるんですよ。
中島:マジで?!
山村:硬い生地じゃないと薄くは作れないんで。
こう、非常に生地が薄いフレーム。これとかめちゃ薄いじゃないですか。
中島:はい。
山村:これとかも、フレンチのいいところの内の1つです。
分厚いだけがいいってことではないんですよね。薄くて細いっていうのが1つの魅力なんですよ。
中島:なんかそう聞くと、薄いのもよう見えてきますね~。
ちょっと色っぽいというかね。
中島:アバンギャルドの中やったら、人気があるとかっていうの、そんなんあるんですか?
山村:一応、名前のついてるモデルとかは結構、
ガーゴイルとか、あの辺は安定的に人気がありますね。
中島:ああ、そうなんですか。
山村:そうそう、あとこっちの面白いやつはナイトレンジャー。
中島:あ、ナイトレンジャ―。聞いたことあるわ。
この形って、危ないですよね。
山村:危ないですね。何でこんなんになったかは分からない、ははは(笑)
中島:あんまはめてる人いないですよね。
どういう人が購入しはるんですか?
山村:いや、分かんないですね(笑)
何て表現したらいいんですか、変わった方が多いですね(笑)
中島:やっぱそうなるんですよね(笑)
でもすごい気になるなあ、それも。あ、こっちのスカル、これはどうですか?!
山村:スカル、いいんじゃないですか。最初見たときはすごい、感動しました。
何やこれ、みたいな。造りもいいし、生地もしっかりこう、角立ってるじゃないですか。
中島:はい。
山村:こういうのですよね。テンプルの造りも変わってますよね。
これ今、芯を入れるのって『シューティング』っていう技術なんですよ。
中島:シューティング、はい。
山村:カチンってこう、打っていくんですよ。バンバンバンってメタルを。
中島:なるほど、なんか釘打つみたいな感じか。
山村:そうなんです。それが普通なんですけど、凝ってる眼鏡になると、
現行とかでもそうですけど、『芯張り』といって、こうやって挟んで、芯入れるんですよ。
中島:え、この金もんを?
山村:セル敷いて、そこに芯置いて挟みよるんです。
それが芯張りっていうんですけど。ああ、これは典型的な芯張りですね。
中島:見て分かるんですか?
山村:これ芯が途中でフラットから丸になってるじゃないですか。
その形ってシューティングじゃ打ち込めないんですよ。
中島:あ、ここがフラットでこれが丸。ほんまや。
山村:これ、絶対芯張りなんですよ。
中島:サンドイッチや。そういうことですね。
山村:サンドイッチです。そういう芯張りとかやと結構やりがちなんですけど、芯にもデザインを入れてるものが多いです。
中島:じゃあ、スカルはかなり前衛的やったんですね。
山村:前衛的やと思いますね。
かけてた人の写真見たいですけど、やっぱない、出て来ないですね(笑)
中島:すごい形してますもんね。
山村:うん、ほんとに。これとかヤバくないですか、このブリッジのとこヘコますとか。
中島:ほんまか…。これけど、スカルいいんちゃいます?
山村:サングラスにして販売したこと何回かあるんですけど、
いや、カッコいいっす。やっぱりカッコいいっすよ。
中島:これサングラスにするんやったら薄い色入れるほうがいいんですか?
濃い色のほうがいい?
山村:キャラによるけど、僕は濃い色のほうがカッコいいかなみたいな。
中島:ヤバいヤバい、ちょっと欲しなってきた。
山村:コンパクトなサングラスって、カッコいいですよ。
ちっちゃくて、レンズが濃くて寄っててもカッコいいって中々少ないです。
中島:ちっちゃくて、寄ってて?
山村:寄ってるサングラスってあんまりイメージなくないですか?丸眼鏡ぐらいしか。
すごいちっちゃく見えるんで、結構違和感あるんですよ。ちっちゃいな、みたいな。
でもスカルとかやったら多分違和感ないんちゃうかな。
中島:なるほどなあ。あれ?でもいつもしてはる、小ぶりのヤツなかったですか?
あれ、カッコいいじゃないですか。
山村:あれ、いいですよね。でもあれも濃いの入れると結構難しいんですけどね。
中島:あ、そうなんですか。
山村:これもそうですけど、基本ブラウン15%のガラス入れてますね。
中島:あ、もう決まってるんですね(笑)
やっぱレンズは極力ガラスを入れて欲しい?
山村:うん。入れて欲しいです。値段もそんなに変わらないんで。
反射とかもやっぱり違いますからね。
中島:何か、独特の反射の仕方しますもんね。
山村:そうなんです、そうなんですよ。
プラスチックやとどうしてもこう、何ていうかこう、うねうねって乱反射するんですよ。
フラットになり切らない。細かいところで、こう波打ってるから。
中島:そういうことか…。
山村:ガラスはそういうことなくパリッとね、反射しますんで。
でもね、フラットじゃなくても、球面であっても、まあガラスはやっぱいいんですけどね(笑)
質感がやっぱり高いです。質感が高いフレームなんで、質感が高いレンズを入れてもらうと、うん。
中島:ああ、なるほど。
山村:はい。当時はプラスチックのレンズがなかったんで。全部ガラスですよね。
ただ基本はガラスがいいけど、まあ用途に応じてですね。プラスチックでも全然悪いことはないんで。
中島:こうやって改めてこんな見ると、えげつないですね。
山村:ちょっと胸やけ気味ですよね、この距離で見ると(笑)
中島:ちょっと気持ち悪くなってきました。これ何でなんですか?圧があるんですか?
山村:凄い強いんでしょうね、圧が。佇まいがやっぱちょっと、違い過ぎて。
僕も久々にこの距離でずっと見てると、気持ち悪いですね。ははは(笑)
中島:個性がほんま強いっすよね。
山村:強いっすね。まあ、見た目ももちろん厳ついですけど、何か感覚にこう来ません?こう、肌感というか。
やっぱ、70年、80年前のものが持つ、あれなんですかね。トキを経てるからってとこもあるんですかね。
中島:何かでも、そういうのありますね。
何なんやろこれ。何かこう、ドーンとしてますよね。
中島:山村さん何年でしたっけ、失礼ですけど。もう、これやられて。
山村:お店は8年ですね。個人でやってるときから考えると、もう18年程ですけど。
もうほんと、色々見てきたんで。フランス以上に整っていて面白いなって思えるのは無いですね。
中島:ああ、そうですか。
山村:はい。その歴史的に、こういう人がかけてた、ああいう人がかけてたみたいなのも
カルチャーを感じて面白いっていうのはあるけど。
こうフレーム見て、造りもよくて、生地もよくて。
で、かけてて馴染むってなったらもうフレンチしかないな、みたいな。
中島:はあ~。
山村:やっぱり、どうしてもそういうのって、さっき言った前者のようなものって、かけられてる感が出ると思うんですよ。
中島:うん、うん。
山村:まあ、それはそれでいいんですけど、何かちょっと自分じゃないな、みたいな。
自分で消化できないような感覚です、僕は。そういったフレームたちは。
中島:ああ、言うてはりました。イギリスもんはええけども、ちょっとやり過ぎやしカッコ悪いかなって。
山村:そうそうそう。アメリカもののセルフレームは特に、はい。何かこう、僕はあんまりですね。
眼鏡に負ける感じです。欧米の人の顔用にやっぱ作ってるなって。
まあ、これもそうなんだけど、なぜかアジア人の顔にも馴染むと。負けないっていう印象ですね。
変なんかけても、そんな負けなくないですか。
中島:確かに確かに。
やっぱりカッコええな、この感じ。う~ん、なるほど。
眼鏡についてとなると、本当に時間を忘れて語ってくださる山村さん。
今回の対談ではここまでとなりますので、ぜひ店頭で続きを聞いてみてください。
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