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眼鏡の世界 Vol.1

 

先日神戸の『SPEAKEASY』ならびに『めがね舎ストライク』にお邪魔し、

それぞれの代表である山村さん、比嘉さんにメガネに関するお話を伺ってきました。

濃い内容だったため3部構成になるのですが、

初回となる今回はざっくりと、『メガネに関するあれこれ』となります。

それではどうぞ。

 

 

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・デザインについて

 

中島:最初メガネを作り始めるときに、

「このデザインでいこう」っていのは誰がどうやって決めてはるんですか?

数見てピンとくるものを選んでるんですか?

 

 

山村:僕と柳原(guepardを立ち上げた、札幌のアイウェア専門店『Fre’quence』の代表)は

やっぱり物凄く沢山オリジナル(ビンテージ)を見て来てるんですよね。

それで中には世に出回っていない目新しいデザインっていうのもあるんですけど、

基本的には『デザインが死なない』、『長い目で見ても定番』というか、

『そうなりえるもの』を選んでいるつもりですね。

だからトレンドどうこうというのは無視して決めています。

僕らが『定番』を選んでるっていうイメージでやってますね。

 

 

中島:それじゃあこれも定番ってこと?(gp04を指しながら)

失礼な質問かもしれないですけど。

 

 

比嘉:なんて言ったら良いんやろね。

実際そういう角が落ちているようなメガネって、そこまで数は流通してなかったとは思うんだけど、

ただ山村、柳原の目で、『デザインとして完成してるよね』っていう意味での『定番』なんだと思います。

 

 

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山村:単純にこれを定番に感じられないのは、世に流れてないデザインやからやと思います。

こういうデザインってあまりそこら辺に無いじゃないですか。

だからその、一般的に色んなメガネを見ていない人にとってはアグレッシブなデザインに感じるだけで、

数を見てきた人間からするとこれは定番になりゆるデザインなんですよね。

日本人の顔にも合い易いですし、かけてみると落ち着いたデザインだとは思うんですけどね。

 

 

中島:なるほどなあ。

ちなみに日本人の顔に合い易いっていうのはどういうことなんですか?

 

 

山村:それはバランスやと思います、フレームのアウトラインの強弱や角度。

Frame franceのメガネっていうのは日本人に合い易いものが多いんですよね。

フレームに負けないというか、寄り添ってくれる感じがします。

他の国のフレームだとどうしてもアジア人の顔立ちには負けてしまう事が多いと思います。

だから凄く好きっていうのもあるんですけど。

例えば具体的には、前にも言った『テレビジョンカット』っていうのはかなり、

馴染みやすさっていう面では大きな仕事をしてると思います。

それがframe franceであり、そこまで再現しているのがguepardの良いところですよね。

 

 

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中島:レンズのとこを微妙な角度で削ってるやつやんね。

なんでフランスの人は最初こんなことしよったんですかね?

 

 

比嘉:単純にデザインやと思いますよ。

こうすれば良いんちゃうかっていう、職人の『美意識』で入れてみたんやと思います。

ここ削ったら奥行きが生まれるやんみたいな。

対してアメリカものとかは全部これが入ってなくて、フラットに見えてしまうんですよね。

 

フランスって例えば建築とか家具とか、ポリゴン的な『真四角』ってあんまりなかったりすると思うんです。

なんか角にアール付けてみたりだとかで。

そうすることで空間がスッキリ見えたり、ものとして立体的に見えて格好良くなるっていう。

なんでこの『テレビジョンカット』も、純粋にそうするための削り出しだったんだと思います。

でも現行のメガネでこれを入れてるのって、物凄く露骨に『45度』みたいなやつが多くて、そうじゃないんですよね。

フレームごとに1番良い面構えになるよう、ほんとに微妙な角度で入れてこそなんで。

 

 

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・生地について

 

中島:基本的な質問になるかもしれないんですけど、

メガネに使われてる『セルロイド』と『アセテート』の違いって何なんですか?

 

 

比嘉:まあ成分が違うんですけど、見た目的なとこで言うと、セルロイドには独特の艶っぽさがあるんですよ。

正直今のセルロイドってそんな良いものは多くないんですけど、当時のものは本当に物凄い艶っぽいですよね。

たぶん配合されているものが違ってて、今じゃ再現できないっていう。

あとは色の深みがあるというか、一言で表せれない奥行きがあると言ったらいいんですかね。

アセテートはセルロイドと比べると、どうしても人工的な印象が強くなってしまうんです。

あとは硬いですよね、セルロイドは。べっ甲みたいな感じというか。

触った感じもそうですけど、畳んだときの音も違って。なんか「パキッ!」としてる。

そんで油分もたっぷり含まれてて、凄いんですよ。

 

 

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山村:そういえばセルロイドもアセテートも元々はコットンなんですよ、綿花。

 

 

中島:綿?嘘でしょう?

 

 

山村:ほんまです、ほんまです。

セルロイドもアセテートも辿ってくと『セルロース』になるんですけど、

そのセルロースが綿花なんですよ。そっから石油系の樹脂にしていったものがこれなんです。

 

 

比嘉:『かったい綿』みたいなもんですよね。

普通のプラスチックやったら曲げると割れちゃうんですけど、こんな風にしなりよるんですよ。

あとはメガネも使っていくと沁み込むんですよ、油が。

それで耳にかかってる辺とか白っぽくなったり。

これは綿のシャツの首回りが汚れるのとかと似たようなもんです。

まあ汚れてきたらもっかい磨き直せば綺麗になるんで、そういうメンテナンスとかも出来るんですよね。

よく出来てるんですよ、メガネの素材って。

 

 

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・製造について

 

中島:デザイン、生地ときたんで製造についても少しお伺いしたいんですけど、

これってメガネの型取って、生地から「ガッチョンガッチョン」抜いていくんですか?

 

 

比嘉:それはビンテージの作り方になりますね。

それこそ40年代のフレンチとかは「がちゃんがちゃん」するんですよ。

けど今はPCでCADデータを作って、それを取り込んで切削していくんですよね。

 

 

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中島:はあ~。データになるんやね。

それで削り出したやつを手で磨いていくんですか?それとも機械?

 

 

比嘉:量産されているメガネは機械でいってから手で磨きますね。

削り出したメガネを200本くらいドラム式洗濯機みたいなとこに放り込んで、

磨き粉を入れて、竹のチップとかクルミの殻とか工場によって色々あるんですけど、

そんなんを入れて回していくんです。24時間とか、長いのやったら56時間とか。

そうすることで切削痕がなくなって綺麗な状態になります。

これを『ガラ入れ』って言うんですけどね。

 

ガラ入れはすごく便利で、短い時間で出来るんですけど、

例えばguepardの場合ってけっこうエッジが効いたデザインが多いので、

ガラ入れをやり過ぎると角が落ちちゃうんですよ。

そうなると思ってる方向と違うのが出来上がってしまうので、

出来る限りガラ入れの時間は少なくして、職人さんに時間かけて手で磨いてもらうっていうやり方にしてますね。

これは70歳くらいのおじいちゃんに磨いてもらったんですけど、いるんですよね、磨きのプロみたいな人が。

 

 

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中島:むちゃくちゃ大変やないですか。手間かかって。

そんだけ時間かけてつくってはるんですね。

 

 

比嘉:出来上がって並んでるメガネを見ると、全部機械で作ってるんやと取る人も多いと思うんですけど、

けどそうじゃなくて、人の手がしっかりと入ってるんですよね。

木工品とかと一緒で、職人が削り出して丁寧に磨いて作り上げているものってあんま無いと思うんですよ、

今世の中に流通しているものの中で。

例えば椅子とか机とか仏像とか、木を削り出して作ってるものは、

やっぱ『時間かかってるよね』、『人の想いが籠ってるよね』っていうのがたぶん見え易いと思うんですけど、

実はメガネもそこに近しいものがあって。これってけっこう凄いことやなって思います。

それだけ手をかけて作られているっていうところで、メガネの製造ってロマンがあんねんやろなって思いますよね。

 

 

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中島:いやあ、なんか僕が考えてることと通ずるものがあってじんと来ましたわ。

どうもありがとうございました。

 

 

さて、いかがだったでしょうか。

初回はここまでとなりますので、第二回、第三回をお楽しみに。

 

 

 

 

SPEAKEASY
めがね舎ストライク
Fre’quence

 

 

 

 

 

 

 


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