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AUBERGE:別注パンツ制作秘話

 

先のイベント期間中、先行販売としてご用意させていただいたAUBERGE×doo-bopの別注パンツ。

10月12日から、あらためて販売を開始いたします。

それに先駆けて、今回の別注企画に関するお話をお伺いしました。

 

 

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中島:今回は別注のパンツをありがとうございました。

今だから言えるといったらあれなんですけど、実は太いパンツっていうのが苦手なんですよね、僕自身。

あんまり穿かないんですよ。だからこれまで店でもそういうのは排除していってたんですよね。

せやけどふとしたタイミングで、俺が今まで穿いた中で、

気に入った太いパンツはなんやったやろって思って出てきたのが米軍のパンツやったんですよ。

それが65なんか51なんか、ファティーグなんかはさておきね。

 

それで今回この形でお願いしたんですけども、やっぱりそのときの小林さんの提案が凄いなって。

ファスナー1つ取ってもそうですし、このディティールはいらないんじゃないかとか、色々あったと思うんですけど。

僕としては本当に素晴らしい、エレガントな、アメカジ色のしない軍パンを作っていただけたなって。

でもこう裏話的な部分で、実は最初やりたくなかってんとか、こういうのが難しかったとか、

逆にここは良かったとかっていうのがあればお教えいただきたいんですよね。

それを今後の参考にもさせていいただきたいですし。

 

 

 

小林:うん、例えばこの玉虫の生地は、ほんとに転びやすくてですね、

いわゆる『お父さんが着ているコート地』っていうビジュアルもあれば、

なんとも不可思議な色を放つ生地もあればっていうので。

特にこれはベーシックなコートの色なので、もうどちらに転ぶか分からなかったっていうか。

もしかしたらこう、『おっちゃん系』に転ぶ場合もあるなとは思ってて。笑

まあカーゴっていうアイテムなので、癖のあるシルエットにまで持ち込めば大丈夫かなっていうのはありましたけど、

全然安全ではないと思いましたね、ここは1つ賭けかなって。

 

 

 

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中島:サンプルが出来上がってからも、シルエットをもうちょっと太くした方がいいんちゃうかとかありましたもんね。

意外とちょっとヤバいかなっていうのもあったってことですか。

 

 

 

小林:そうですね。笑

太さが中途半端だと、ガチ作業着っていうか、ほんとに微妙な着地ってのがあるんですよ。

ファッションではない、そこにいく可能性はあったのかなと。

1回パタンナーの上田が形出したら、

やっぱりあのオリジナルの迷彩のファティーグパンツが思いのほか太くなかったんですよ。

これはパンチが足らん、パンチが足らんってなったじゃないですか。笑

あれが怖いんですよね。

 

古着ってオーラがあるから、1200%出てるから騙されちゃうんですよ。笑

だから例えば古着屋さんで10万円で買ってきた洋服の形を抜いて作ったら、

「10万だぞ!無敵だぞ!」って誰もが信じたくなるんですよ、そんな凄いものがベースなんですから。

でも実際は、輪郭をそのまま抜いても全然ダメだったってことがいっぱいあるんです。

だから〇〇年代のあのレアな古着が好きだから、それをベースにしたらきっと格好良いのが出来るだろうっていうのは大間違いで。

そこに対して、何も疑問に思わず「格好良いな」って穿けたり、このディティールが面白いんだよなってなるように、

依頼者が望まなかったとしても、ほんのり変化を盛り込むのっていうのが俺と上田の仕事なんですよ。

「実はここをいじりました」なんて伝えなくても、「言った通りですよ。良いっすね」って言っていただけたら、

僕らとしてはホッとするんですよね。

 

ただ今回の別注パンツは、素材力がまあ半端ないところからのスタートだったんで、

そこに関してはリードが取れてるなっていうのはもちろんありました。

あとは1点の曇りもなく120点でっていう要望だったので、42タロンファスナーだとか、

本水牛のボタンっていうので、ある意味で価格度外視だったのが良かったですかね。

例えばどこかケチってしまうと、「ここは結構普通なんですね」なんて突っ込まれたりしたかもしれないし。笑

 

 

 

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中島:いやほんとそうなるんですよ。笑

けどほんまに嬉しいです。ありそうでないじゃなくて、なさそうでなかったんでこういうパンツは。

やっぱり軍パンってチープ素材感であるとか、粗野な作りが持ち味とされてると思うんで。

あとは今の世の流れに合った服でもないじゃないですか。

でも俺も気に入って大切に穿けるし、5年10年後もこれやったら穿くやろし、

穿かへん期間があったとしても置いとくパンツになるかなっていう。

 

けどこんだけ高密度の生地やったら工場の人とかも大変やったでしょうね。

 

 

 

小林:そうなんですよ。織物っていうのはこういう風に、糸と糸とが交わって面になってるんですけども、

こう縫製の針が生地に落ちたときに、糸が適当にふっとどいてくれて針が入るっていうのが一番の理想なんですよ。

でもこのレベルの高密度になってくると、糸がどくスペースっていうのがほぼないんですよね。

よく限界の高密度って言いますけど、針が入るギリギリは見定めてるんです。

完全にやっちゃうとそれは紙ですから。紙は破れちゃうんですよね、意外と弱いんですよ。

本当にギリギリ、何とか糸が動くっていうので切れない、粘る生地になるんです。そこまでの計算がいるんですよね。

それでまあこの生地は限界に近いところまで糸が入ってるものなので、縫製も針が下りたときに、

わずかな隙間を狙って、糸を切らずに縫っていかなきゃいけなくなるんですけど、それには針交換しかないっていう。

 

 

 

中島:ちょっと縫ったらすぐ針交換せんとダメなんですよね?

 

 

 

小林:そうなんですけど、これがなかなかできないんですよね人間って。

「まだいける、まだいける」ってなって。笑

交換するのもほんと手間だし、一応は縫えるんで。

でもだんだん音が変わってくるんですよ、縫ってるときの。

針の先が少しでも欠けると違和感のある音になって。

で、そうなったらもう出来上がったパンツは生地の糸が切れちゃってるんですよね。

だから音が変わる前にどんどん針を変えなきゃいけなくて。

 

そんな細かなことなんですけど、それが『クオリティー』っていうところなんですよね。

ハイブランドの、1着何十万っていうクラスのものを縫ってる人たちもばんばん針変えますよ。

でも実際やってみると分かるんですけど、ほんとに変えたくないんですよね。笑

まだ使えるわけだから、音も変わってないし。

だけどその結果何が起こるか分かってる人はもちろん変えるんです。

これが工場の責任感ですよ。僕の服でそんなこと起こすわけにはいかないって。

電話でも言ってましたよ、「縫うときは息止めてます」って。

慎重に、慎重に縫わなきゃいけないから、このパンツを息止めて縫うっていうんですよ。

 

 

 

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中島:すげーな。

そういった素材を扱う縫子さんの苦労であったり経験であったりっていうのも凄いもんがあるねんな。

携わる人みんながプロじゃないとこういった製品っていうのは出来ないんですね。

小林さんもそうやし、生地作ってる人もそうやし、その縫製工場の人もそうやし。

 

 

 

小林:こうパッと商品を見て、なんかこう締まりがあるというか、

何も違和感を感じないっていうのは実は素晴らしいことなんですよ。

現場の方々の、頼んだわけじゃないけど気配りをしてくれていたっていうことの集大成が、

「あっ、なんか綺麗に出来てるな」っていう。

『なんかいいな』っていうは、実はそれだけのことが詰まりまくってるんですよね。

 

でもうちの服を縫ってくれてる、間に入ってくれてる工場のおばちゃん達も、

みんな実はすごく強く認めて欲しいと思ってるんだけど、

どんどん川上になればなるほど、直接お店の人や購入してくれた人とお話をすることなんてもちろんなくて。

だから僕はいつも、納めたものが完売したとか聞くと、すぐラインとかで伝えてあげるようにしてるんですよ。

「縫ってもらったやつ全部売れたみたいですよ」って。そしたらみんなキャッキャ言って喜んでるんですよね。

まあそういうちょっとしたことがもの凄い喜びで。結局針を変える1つ、彼らの気持ちなわけですから。

やらなくても似たようなものは出来るんだけど、やったほうが綺麗に出来ることは分かってるから。

やるかやらないかですよ。

 

 

 

中島:はあ~そうなんや。ちょっと感慨深くなっちゃったな。

でもなんかこう、また何かお願いしたいですね。

やんわりですけど。笑

 

 

 

小林:ぜひともぜひとも。笑

 

 

 

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