眼鏡の世界 Vol.3
3部構成でお送りしてきた【Column】ですが、いよいよ今回で最後となります。
昨年の12月からdoo-bopの店頭に並んだ『Frame France』。
この宝物のようなメガネに対する理解を深めるため、
あらためて『SPEAKEASY』の山村さんにお話を伺いました。
中島:正直うちのお客さんからしたら、まだ『Frame France』っていう言葉に馴染みがないと思うんです。
この言葉って具体的にこれこれを指してるとかあるんですか?
フレンチビンテージ全般を指してるとか、例えば40年代50年代のものを言ってるとか。
山村:いえ、単純に『made in France』っていう意味なんですよ。
ただ「これは何十年代のFrame Franceですよ」みたいなことを言い続けてきたら、
いつの間にかジャンルとしてそういうのが出来上がってた、そんなイメージでしたね。
ああ、あとはもしかすると本がきっかけやったかもしれないです。
『Frame France』っていうタイトルの書籍を作ったので、それがきっかけで僕らが取り扱っているものを
そう表現するようになったのかもしれないですね。
中島:ざっくりフランスのメガネをさしてるってことですね。
でも色々な年代のものがあると思うんですけど、
山村さんがやっぱり良いって思うのが40年代のものなんですよね?
それって30年代とか50年代と比べてどう違うんですか?
山村:そうですね、40年代・50年代って生地がどんどん変わってきたんですね。
どんどん量産体制に移っていって、アセテートに変っていくんです。
もともとフランスでも100%セルロイドのものが存在していて、
なんですけど、いくらクオリティが高いセルロイドでも長い年月が経つと朽ちていくんですよね。
だから厳密には今僕らが取り扱いしているものはセルロイド100%のものは少ないんです。
で、フランスでも燃えにくい素材『セルロイド』をベースとした
『セルロースアセテート』っていう素材に変るんですよ。
燃えない、長持ちする、しかも油分もぜんぜん抜けにくいっていう、
ほんと最高の生地のメガネがスタートするのが40年代なんですよね。
さらにメガネとしても成熟、今のメガネの基本となるものが出てきたのもこの年代で、
デザインは40年代にかなり完成しているんですよね。
30年代だとほとんど丸メガネしか出てこなくて。
中島:なるほどなあ。
デザインと生地の良さが1番合致してるのが40年代ということか。
山村:メガネって60年代から『ファッション』になっていくんですけど、全然ファッションでなかった40年代に、
すごくアグレッシブなデザインの『ロック』とか『ガーゴイル』とかも出てくるわけです。
その辺の背景も考えるとやっぱり面白いなって思いますね。
何を思って作ったんだとか、どういう人のためにデザインしたんだとか。
しかも1本だけじゃなくて何本か出てくるんで。確実にオーダーメイドではなかったと思うんですよ。
中島:その60年代以降の、ファッションになった後のメガネも扱ってはるんですか?
山村:ある程度はありますけど、力は入れてないですね。
デザイン的、カルチャー的に面白いのがあれば購入してはいますが、
シンプルに自分が身に着けたいと思わなくなりました。
僕らのやってるのは質が良くて作り込みも丁寧で、しかもアジア人の顔に馴染んで、
普段の生活に取り入れやすいという事を最重要視するようになりました。
あと昔のものは洋服みたいにサイズもあるじゃないですか。ピッタリとしたサイズでかけるっていうのが良いですよね。
60年代とかになると基本的にはワンサイズ、ツーサイズくらいになってしまうので。
サイズも大きいですし、何て言ったらいいんですかね、『ファッションファッションし過ぎてる』というか。
そういうのじゃないなと思っていて。
今は『Frame France』っていうジャンルが流行ってしまって、ちょっとトレンドみたいになってますけど、
僕の中では全然そうではなくて。
いわゆる『良いメガネ』っていうものがフレンチのこの年代なんじゃないかっていうところで
お取り扱いさせていただいてるんです。
中島:少し話は変わるんですけど、セルのメガネはやっぱりフランスって言わはりますけど、
他の国とか、そのイギリスとかアメリカだとかそういった所のメガネっていうのは全く別物なんですか?
山村:別物ですね。
アメリカものとかイギリスものとかも見てきたんですけど、
やっぱり生地の質感はアメリカはもう全然で、僕的には好みではないんですよね。
デザイン面でも武骨で格好良いっていうのはあるかもしれないですけど、
なんかこう乗せたときに見た目がしっくりこないというか、やっぱり欧米用のメガネやなっていう印象で。
イギリスも格好良いんですけどね、生地も良かったりしますし。
ただデザイン的に厳しいんですよね、なんかコスプレというか、『頑張ってる感』が出るというか。
フランスだと一見アグレッシブなデザインでも不思議と馴染むので、メガネに負けない感じがありますよね。
そこはフランスメガネの魔術といいますか、作り込みの丁寧さも関係していると思います。
あんまり言うと他のメガネをバカにしているように取られるかもしれないんですけど、
やっぱり40年代50年代の『Frame France』が本当に好きなものなので。
もちろんここに来るまでに20年近く色々と見たり買ったりしてきてるんですよ、ブランドものとかも。
ずっと色んなヴィンテージフレームコレクターやってて。
それはそれで面白かったです、「誰々がかけてたモデルや!」みたいな。
それを自分で所有する喜びももちろんありましたし。
でもそういうのもちょっと違うなと感じるようになって。
誰かになりたいからそれを買うとか、よくあるパターンだとは思うんですけどそうじゃなくて。
自分自身に納得のいける1本っていうのがね、大事だなって思いますから。
中島:最後に山村さんとしては、こういったメガネをどの様な人にかけて欲しいだとか、
そういう想いって何かありますか?
山村:シンプルに好きな人がかけてくれれば良いと思うんです。
ただ本当に思うのは、『トレンドじゃないんですよ』っていうところは強調したいですね。
この格好にはこのメガネでしょみたいなのではなくて、色んなスタイルに馴染むメガネたちなんで。
上手いこと一言で表現するのは難しいんですけど、『良いメガネ=Frame France』みたいな。
そんな感覚でいてもらえたらなと思います。
さて、Vol.1・2・3とお付き合いいただきありがとうございました。
今回の【Column】を通して、この世界に少しでも興味を持っていただけたのであれば幸いです。
インディアンジュエリーや革靴と同じように、
『Frame France』が当店にとって無くてはならない存在となるよう今後も力を注いでいきますので、
これからも注目していてください。
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