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メキシカンラグの今 Vol.1


アフリカのスツールや飛騨の雪入道など、ここ数年当店が注目している

いわゆる『民芸品』と呼ばれるようなモノ

そして今月末、新たに『メキシカンラグ(サポテックラグ)』をご紹介させていただきます

今回はそんなラグを扱っている、武藤さんにお話を伺ってきました






中島:そうしたらよろしくお願いします。

まず、メキシコのラグに興味を持つことになったきっかけであったり、

こういう転機があって今に至るっていうのがあれば教えてもらえます?



武藤:なんやろうなぁ…。

メキシコの商材をやり始めて、3年くらいやってる中で、オアハカっていう街があるんですけど、

そこにまぁ『民芸』って言われる様なものが結構沢山あるんですよ。

そこで色んなものに触れて、その中の1つにラグってものがあって。


村によって産地があるわけですよ。

パームのバスケットを作ってる村があったりとか、織物やってる村があったりとか、

陶器作ってる村があったりとか。

日本でもそういうのはあると思うんですけど、滋賀の信楽焼とか尾州の織物とか、

どこの国でもあると思うんですけど、メキシコでも同じようなノリでやっていて。








武藤: それでラグは1回村に、産地に連れていってもらったときに、

それまであんまりラグのことについて深く知ろうとしたことがなかったんやけども、

やってる内容見てたら「ヤバいなぁ…」と思って。

例えば糸を染めるのでも、サボテンに付く虫を使って色を染めたりしてて。

このサボテンに付いてる白いの(本の挿絵)、虫が作ったやつなんですけど、

この白いのを取って、ザクロの汁シボって混ぜたら紫に変わったりとか。







中島: あぁ~、染料とかも全部その辺にある天然のものでやってるんや。


武藤: そうなんですよ。色んな天然の染料を使って糸から染めて、

そもそも糸も羊から刈った毛を剣山みたいなやつでといて、それを糸車にかけてって。



中島: はいはいはい。


武藤: もう本当に1からやってるんですよね。

まぁそういうのを知って、あとはメキシコのラグに持ってたイメージが変わったというか。

僕って昔ずっとアメリカに行ってたから、何となくメキシコのラグのイメージっていうのは持っててんけど。

それって結構派手な明るい色彩の、なんかメキシコやなって分かりそうな。

それで質も悪いものっていうイメージが強かったんですよね、アメリカで見てたら。


もちろんアメリカでも探したら良いものもあったんやろうけど、

中古とかで流れてきてるものって、70年代とかに作られてたむっちゃ安価なラグやったんですよ。

アメリカ人の観光客向けに、化学染料で染めて大量生産してたようなやつ。

で、大量生産の中でこの村でもこう、天然染料で染めるっていう技術が途絶えかけたのだけれども、

もう一度復活させようってなって、今その村がまた有名になったっていういきさつがあるんですよね。








武藤: あとは僕が行ってる工房で作ってるラグの柄、

あんまりこう、今まで見たことがないようなデザインというか。

オアハカの街中にもラグって結構売ってるんですけど、

でもそこで見るものって、さっき見たような『ザ・メキシコ』って感じのテンションなんですよね。

でも僕が行ってる、サムエルさんの工房に行ったら、

そんなんも作ってるけど、ちょっとこういうモダンというか、面白いパターンのものも作ってて。

そっちやったら日本で紹介したいなって、そんなところから始まった感じ。



中島: なるほどな~。

確かにこんな柄のメキシカンラグあるんやって最初びっくりしたもん。







中島: さっきの話やとラグに出会う前からメキシコに行ってたみたいやけど、

そもそもメキシコに惹かれたのは何でやったん?


武藤: アメリカに行ってるときに、何かね、アンティーク屋とかよく行くじゃないですか。

アンティーク屋行って、何か雰囲気良いなって思うものって、結構メキシコのものが多かったんですよ。

素朴なものとか、陶器やったり織物だったり、木のものやったりとか。

気が付いたらメキシコのものに触れてることが多かったんですよね。

中島: あぁ~知らぬ間に?







武藤: そうそう。後から本見てたら「これメキシコのやったんや」みたいな。

当時からアメリカのものも好きやったけど、中南米の素朴なものも好きやったんですよね。

それもあって実際にメキシコに行きだしたんですけど、街中にはそんなもの売ってないんですよ。

結局作り手のところ、村まで行かないと無いんですよね。

で、その村々の作り手のとこに行きだして、作ってるとこ見せてもらったりとか、

そうしたら余計、あぁ、こんな風に作ってるんやとか。

『手作業のすばらしさ』に惹かれたっていうのはあるかな。



中島: それは分かる気がするは、インディアンジュエリーとかもそうやもん。

作ってる人のところまで会いに行く。







武藤: 意外とみんなメキシコのもので「何を知ってる?」ってなったら、タコスとか、

テキーラとか、その辺になると思うんですけど。

そんなんじゃなくて、もっとこうメキシコって『今』頑張ってるアーティストが多くて。

中でもオアハカは、『フランシスコ・トレド』っていう有名な芸術家が、数年前に死んだんですけど、

その人が街自体にすごい寄付をしてて、芸術を発展させるために。

それでアーティストを育てる街になってるんです。

だから行ってたら面白いんですよね。メキシコの昔ながらの技法で今のプロダクト作ってる感じなんかな。








武藤: 話してて思ったけど、単純にメキシコのものが好きな理由って言われると、

『素朴なものが好き』っていうのが元々あったんかもしれへんね。



中島: クラフト感であったり?


武藤: そう。やっぱり手で作ってるものに惹かれるし、それは服でもそうやけど。

やっぱり大量生産のものよりは、1点物のやつ。



中島: うん、分かります。



武藤: うん。それに惹かれるっていうのはずっとあって。

それで歳とってくると、ずっと使えるもの、家で使えるものってなって。

このコロナで家にいる時間も長くなったじゃないですか。

じゃあ家にいる間に良いものに囲まれて生活したいっていうか。

実際にそういう人増えてそうじゃないですか。




中島: それは確かに。


武藤: 服は服でもちろん良いけど、服のアウターを10万円で買うんやったら、

床にひくラグに10万円出す感覚持ってるかなみたいな。笑

僕自身も家具インテリアがむっちゃ好きで、基本的にそっちにしかお金使ってないんで、

そんな人も増えてきてるんちゃうかなって。







中島: そうなんやね~。

またちょっと話変わるねんけど、これ触らさせてもらってね、

今まで見てきたこういう風なラグって結構ボソボソしたやつが多かってんけど、織りが緩いっていうか。

これだいぶしっかりしてるな。



武藤: 結構ガシってなってるでしょ。

糸入れてガシャーンって引く力が弱かったらテンション緩くなるじゃないですか、

糸の入りが奥までグッといかないから。

でもこれは強く引いてるからどんどん目も詰まって硬くなるし、

糸の量も増えるから重くなるし、まぁ強いラグになるんですよね。

あえて弱くする人ももちろんおるけど、柔らかいラグにしたい人は。

でもここは結構ね、しっかりとやってる。



中島: こういうラグって洗っちゃうと斜坑するというか、歪むっていうイメージがあるねんけど、

こんだけきつく織ってたら斜坑もしないん?



武藤: しないしない。僕もけっこう洗ってるけど全然大丈夫。

洗えるし平織やから両面使えるし、裏表どっちも同じデザインなんで。

そこも良いところやね。






中島: そっか…。中々ラグって洗えると思ってる人少ないよね?

俺もナバホのやつとかはよう洗わんし…。

武藤: う~ん、それは少ないんちゃうかな。

昔のは色抜けとか起こるかもしれへんけど、これは色止めもしてるんですよ。

色止めの方法も灰とか使った昔ながらの方法なんやけど。

そういうのはちゃんとやってます。



中島: あ、色止めもしてるんや。



武藤: ただでもね、赤だけは若干滲むことがあった、過去に洗って。

でもほとんどは大丈夫、色々洗ってきたけど。



中島: でもその洗えるって凄く良いなって思ってん。



武藤: あとちょっと水とかこぼしても弾きよるんですよ、少し。

すぐに沁み込まんと、水泡みたいになって、時間経ったら沁み込んでいくけど。

だから意外と水こぼしてもすぐ拭き取ったら大丈夫。



中島: まじで、それも良いね。



武藤: ちょっと何かこぼしてみましょか、コーヒー…


中島: コーヒーはやめとこ、色着いたら困るやろ。笑







いかがだったでしょうか。

月末はメキシコの大きなラグから小さなラグ、更には他の民芸品も並ぶ予定です。

続きとなる『Vol.2』はまた後日公開させていただきますので、お楽しみに。


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