「皮から革へ」 生産現場探訪 (前編)
塩漬けにされてヨーロッパから送られて来た原皮が山積みにされている。
まだ毛がついたままで「生きていたのだな」ということを実感させられる、そんな皮。
ここは姫路、日本一の革の産地だ。
新喜皮革は国内で唯一コードバンの製造が出来るタンナーで、
原料の仕入れから皮革製品の販売までを手掛ける。
今回、あるメーカーさんの紹介で見学をさせてもらうことになった。
まず目に飛び込んで来たのが巨大な木製のドラムだ。
とにかくその規模に圧倒される。
この中で皮は塩を洗い流され、毛や脂肪が取り除かれる。
その横にはタンニン槽があり、これも木製。
濃度を徐々に変えていき、じっくりと時間をかけてなめされる。
ここから乾燥、グレージングという作業を経て革になるのだ。
2階にはたくさんのコードバンが吊り下げられており、乾かされている。
コードバン層の境界を見せていただいたが、見た目に非常にはっきりわかり、
なぜここの皮だけが厚いのか不思議に思った。
よく言われる「農耕馬なのでムチで叩かれて臀部が分厚くなる」のだと思い込んでいたのだが、
そもそも食用の肉を取った後の副産物ということで、
なぜコードバン層があるのかは良くわかっていないらしい。
ここでガラスのローラーで強く摩擦され、光沢が与えられる。これがグレージングだ。
実際に作業するところを見せてもらい、職人技だと感心する。
革の王様、コードバン。完成するまでに約10カ月かかる。
ベテランの職人さんもおられたし、また若い方も大勢いらっしゃった。
一様に情熱を持って仕事に当たられており、また職人としてのプライドも感じた。
皮革生産は人類の歴史そのものであり、人間の英知の結晶である。
その連綿と続く技術を継承、発展させていく現場を見られて本当に良かった。